「はぁっ、はぁ、ううぅっ、ぅんんんっ……


 瓦礫の海と化し、静まり返った大地。

 巨大な少女がその銀色の身体を横たえている。

(立てない……。脚が、手が、動かない……。痛い! )

 湧き上がる切迫感に駆り立てられ、痛み、動かぬ手足で懸命にもがく。地を這いのたうつ芋虫のように。

 しかしいつの間にか、立っていた。痛む右足に視線を落とすと、地面から顔を出した化物に足首を噛みつかれ、太ももには剣が突き立てられていた。

「うわあああああっ……! あっ、ああああぁっ!!」

(痛い!足が、足がぁっ……!!)

 視認した瞬間、より一層右脚の痛みが強くなった。しかし、今度は倒れることすらできない。今すぐ倒れ込んでしまいたいのに、うずくまり太ももを手で抑えることしかできない。

 目の前に、何かが近づいてくる。どこから現れたのか、気がつくとそこにいた。背後からは巨大な何者かに羽交い締めにされている。

 目の前の何者かに、突き刺さっていた蛇腹剣が引き抜かれる。

「ううううううぅっ……!! はぁっ、はぁっ……」

(息が、苦しい……! )

 息を吸ってもなにかに押さえつけられているように肺に空気が満ちない。身体が重く、水の中にいるように息苦しい。それでいて、灼けるように熱い。

 なんとか視線をあげると蛇腹剣が眼前に突きつけられる。視覚にも異常があるのか、目の前にいるはずの剣の主の姿すらはっきりしない。

 ただただ、恐怖という感情だけが実体を持って胸の中に存在しているかのように膨れ上がる。

 瓦礫の海だった周囲が炎に包まれる。

『助けてっ!! 』

『死にたくない!! 』

 どこからか声が聞こえる。助けを求める声が。けど、助けられない。もどかしい。涙が溢れ出し、止まらない。

「ぐっううううああああああぁっ……」

 胸を貫くような激痛。剣の先端が、カラータイマーに押し付けられる。みるみる亀裂が入り半球状のそれが内側にたわむ。

(胸が、胸の奥が、灼ける……!? )

 痛い、苦しい、怖い、悲しい。逃れたい。でも、逃げたくない。ぐちゃぐちゃになった感情とともに視界が、世界が歪む。

(助け……て……)

 声が出せない。思い切り叫んでいるはずなのに、蚊の鳴くような声を絞り出すのがやっとだ。


『……フィー……ん』


(誰、か……助け……て)


『ソフィ……ん、大丈……かぁ? 』


「あああああああぁっ……!! 」

 カラータイマーが砕かれた瞬間、目の前が真っ暗になった。


「ソフィーさん!! 」

「うぅっ、はぁっ、はぁっ、う……ぅ……」

 身体を蝕むような苦痛に息は上がり、うめき声をあげてしまう。

 さっきまで重苦しく、鈍かった感覚がクリアなものになっていく。

「大丈夫ですかー!? 」

「う……うぅ……」

 まぶたが震える。

 視界の右半分は暗闇に覆われたままだが、左目に光が差し込む。眩しさは感じない。薄暗い。視界には、知らない誰か。人間だ。


「だいぶうなされていたようですが、大丈夫ですか? 」

 白衣を身に着け、メガネをかけた男がベッドに寝かされているソフィーの顔を覗き込み話しかける。

 薄暗い、個室の病室。ソフィーはそのベッドに寝かされていた。

(今のは……夢……? )

「うぅっ、こ……こ、は……わた……し、は……」

 悪夢から覚め感覚は確かなものとなったが、ソフィーは思うように声が出せないでいた。うなされていたせいか額には珠の汗が浮かび、全身汗だく。喉がカラカラに渇いてしまっている。

「ここは防衛隊が運営する病院です。夕方戦ったあの街で倒れていたあなたを防衛隊の方々が発見してここに運んだんです。あなたが担ぎ込まれたときは驚きましたよ」

 白衣の男の話を聞くと、ソフィーは倒れる前の最後の光景を思い出した。完膚なきまでに叩きのめされ、敗走し、路地で倒れたのだ。

「うっ、ぐうぅっ……!?」

 意識が覚醒していくにつれ、ぼんやりと全身にのしかかっていた苦痛が確かな痛みがとなってソフィーを襲う。夕方の戦いで受けた傷だ。

「人間と同じ治療をして良いものか迷いましたが、出来る限りの処置はさせていただきましたよ」

「お医者、様ですか。あなたが……治療、を……。 助かり、ました。本当に……うっ……げほっげほっ!」

 口内が渇いていて上手く喋れないソフィー。咳が止まらず、傷に響く。

 白衣の男がすぐに、水の入った吸い飲みをソフィーの口元に差し出す。

「水で、大丈夫ですか?ソフィーさん」

 ソフィーは止まらない咳を口の中でおさえ頷くと、身体を横たえたまま差し出された吸い飲みを咥え喉を潤した。冷たい水が染み渡る心地よさを感じ落ち着いたところで、ソフィーは違和感に気づいた。

「あの、私のこと、なんて?」

 医者の男は一瞬不思議そうな表情をした後、心配そうに言った。

「大丈夫ですか? もしかして、ご自分のことがわからないんですか? ソフィーさん? 」

 はっとして、ソフィーは自らの身体に視線を落とした。

 布団がかけられ、胸元までしか見えないが、銀色の身体。それに赤い模様。胸にはガーゼで覆われているが、確かにカラータイマーがある。

(変身、してない!?人間の姿になってない……どうして!?)

 ソフィーは地球での活動時、普段は人間の姿に変身して人間とともに日常生活を送っている。ティム星人との戦いから逃げたときも、たしかに人間の姿になったつもりでいた。しかし、そうなってはいなかった。

(変身能力が、使えない……?)

 ソフィーは不安になったが、今は人の前だ。変身能力の異常を確かめることは出来ない。

「記憶が混乱していますか?ご自分の名前はわかりますか?」

 思考を巡らせ固まっていたソフィーに医者が問いかける。

「あ、はい。だ、大丈夫です。私はソフィー、昨日の夕刻……私は……」

 言葉はそこで途絶えたが、医者の男はソフィーの表情から記憶に問題はないと感じたようだった。

「少し、身体を診ましょう」

 「はい、お願いします。あの、あれからどれくらい時間が経ってますか?」

 医者の男がソフィーにかけられた布団に手をかけ、めくりあげる。

「あなたが姿を消してからは7時間ほどですかね。怪我が怪我でしたので、処置を終えたのはほんの3時間前です」

 露わにされる銀色の肢体。しかし、右足と左腕のほとんどすべて、体中の多くの部分が包帯に覆われている。折られた右腕と足首はそれぞれ固定されているようだ。

「我々人間にはあなたの身体のことはわからないことばかりなので、色々聞かせていただきますが、いいですか?まず、傷の治りはどうです?といっても我々人間からしたらものの数時間で変化があるとは思えないのですが」

「あ、はい。回復は、人間よりずっと早いはずなんですが……」

 医者の質問に答えるソフィーは言いよどみ、胸元に視線を落とす。そして、包帯を巻かれた左手でカラータイマーを覆うガーゼ不器用にめくった。

「……っ!?」 

 ソフィーの顔が曇る。歯を食いしばり、閉じられたまぶたが震える。その表情が表すのは、悲痛。

「やはり、処置が良くありませんでしたか。そこは我々にはどうしていいかわからず……」

 カラータイマーの半球部分には深い亀裂が入っていて、テープや接着剤のようなもので補強されていた。本来放たれているはずの光は、消えてしまっている。

「い、いえ。十分です。本当に、助かりました……」

 ソフィーはそう言ったが、その表情は暗い。

「……そうですか。腕はどうですか?骨折していましたが、もう動かせたりは……?」

「いえ、まだとても動かせそうに、ないです……痛みが、ひどくて。回復には……時間がかかりそうです」

 エネルギー器官、その核は出力の限界開放と、カラータイマーの半球に生じたヒビから入った地球の大気により甚大なダメージを負っていた。 

 エネルギーはほとんど回復していない。身体にエネルギーが巡っていないソフィーの回復力は、地球人とそう変わりはない。

(これじゃあ、傷が癒えない……。……いや……)

 ソフィーはエネルギー器官の核に負担をかけてしまったことを後悔したが、それはすぐに否定した。

 仮にエネルギーが十分にあったとしても、その華奢な身体に負ったダメージはあまりに大きく、とても明朝までに回復するような傷ではないのだ。

「傷の様子を診ます。少し動かしますよ」

 そう言うと医者はソフィーの右足に触れる。

「ま、待って!動かさな……あぁっ! ……くっ、うぅ…… 」

 膝を立てられたソフィーの右足に激痛が走る。

 右足に刻まれたいくつもの傷。ただでさえ絶えず苦痛を生み出し続ける傷だ。とても動かせる状態ではない。

 医者は黙って包帯をほどき始める。ソフィーを心配するような表情や、処置に対する不安の表情が消えている。無表情に手を進める。痛みにあえぐソフィーのことなど、気にもとめずに。

 痛みにソフィーの息が引きつり、まぶたが固く閉じられる。

 包帯の下の銀色の肌がさらされていく。

 医者の手が、太ももの包帯の下で傷を覆っていたガーゼを剥がす。

「どうですか?」

「……うぅっ…」

 恐る恐る傷の状態を確認したソフィーは、思わず自分の脚から視線を逸した。落ちている回復力、傷の痛みからある程度覚悟はしていた。しかし、とても見ていられるものではなかった。

「我々人間から見れば、傷を負ったのは昨日の今日なので、特に変化がないのは不思議ではありませんが……やはり、良くないですか」

 ほどよく肉の付いた、ソフィーの柔らかな脚線美はかつての面影こそ残るものの、見るも無残な姿に成り果てていた。いったい何針縫われているのか。血が滲み、あまりにも痛々しい縫合された傷。損失が大きかったのか、美しかった脚のラインを歪ませている。ふくらはぎの怪我は縫合できなかったのか、抉れたままだ。

 治癒が進んでいないということについてもだがそれ以上に、自分の右脚の惨状に女性として、ソフィーは目を逸らさずにはいられなかった。

(とても……とても戦えない。こんな状態じゃ……朝までになんて……)

「まだ4時間ほどありますが、治りそうもありませんかね?”朝まで”には」

 医者の男の言葉に、ソフィーの身体がピクリと反応する。

「あの、朝までに……って? 」

 医者は冷たい声で続ける。

「朝までに、戦える状態までには回復しないのかと、訊いています」

「え、あ……は、はい……でも……それでも……」

 それでも、戦わなければならない。護らなければならない。

 そう言おうとするのを医者の男の声が遮る。

「やっぱりだめみたいですねぇ! 入ってきていいですよ! 」

 病室の外に向かって男が叫ぶと扉が開き、二人の男が入ってくる。 

「かーっ!地球も終わりかぁっ! 」

「……」

 大きな声で入ってきた体格のいい坊主頭の中年男性と、ややうつむき無言の、痩せた色白の青年。

「あ、あの、これは一体……?あっ、あぁっ…!? 

 突然の事態に狼狽するソフィーの右足を、坊主頭の男が乱暴に持ち上げた。

「あー確かに、こりゃダメそうだな」

「あぁうぅっ……!? 」

 激痛に、傷ついたソフィーの上体が跳ね起きる。

 男がソフィーの太ももを抱くように抱え、手で弄る。縫合された傷があってもなおふっくらとした柔らかさに指を埋める。

「あっ、あっ……!やめ、いっ……たっ……!やめて……!」

「良い脚だ。前々から思ってたんだ。この肉つき、想像以上だ」

 痛みに顔を紅潮させ、必死に懇願するも、もはやソフィーの願いは届かない。

 男はその反応すら愉しんでいた。

 未だおさまっていない出血が、男の指を赤く染める。

 痛みに悶え、伸ばしたソフィーの左手が虚しく空を掴む。

 「ほ、本当に良いんですかね、こんなこと」

 色白の青年は三者の顔色を伺いながらおどおどとしている様子だ。

「えぇ、朝までに彼女が回復するならわずかでも希望はあるかと思いましたが、無理なようです。明日までの命なら、最期にこういう経験をするのも良い……ひひっ」

「あっ!? ぃやっ……痛っ、あぁっ! 」

 言いながら、白衣の男がソフィーの上半身を片手で押さえつける。胸を鷲掴みにし、引き伸ばし、圧し潰す。

 豊かだが男の指が中腹まで埋まるほどに柔らかい少女の乳房が、男の意のままにその姿を変える。

 乱暴な手つきに傷だらけのソフィーの身体は苦痛に苛まれる。

「やめ、て……あああぁっ!? 」

 こねるように乳房を弄ぶ手を制しようと動いた包帯に覆われたソフィーの左腕を、色白の青年が両手で押さえつける。

「お、大人しくしていてください! お身体にさわりますから……! 」

 じわじわと血のにじみが濃くなり白い包帯を赤く染めていく。

「痛っ、お願い!やめ、て……! やめてぇっ!! 」

 重症には変わりないが比較的傷の浅い左半身をソフィーが暴れさせる。細身の青年を振りほどき、左に寝返り男たちの手から逃れる。

 ソフィーの抵抗に面食らう男たち。

「はぁっ、はぁっ、うくっ、……ぁっ……! 」

 しかし、その身に負った傷がソフィーを縛る。

 自らの身体を抱くように汗ばんだ身を丸め、ベッドのシーツに顔をうずめてあえぐ銀肌の少女。

 その傷ついた身体に、再び男たちが手を伸ばす。

「……お願い、やめ、て……」

 顔を突っ伏したまま発せられる少女の声に、男たちの手が止まる。

「こんなことしてる場合じゃ……ないの。朝にはあの宇宙人たちが攻撃を始める。だから……ひゃっ、あんっ!?」

 弾かれるようにあげた間の抜けた、しかし艶のある声に途切れるソフィーの言葉。

「知ってるよ。でももうだめだろう?あんた 」

 身体の前面を男たちから隠すようにしていた反面、無防備となった背中。

 坊主頭の男が脊柱起立筋の膨らみのつくる溝に指を這わせ、腰骨をなぞり、二つの半球の隙間へと侵入していく。

「巨大な宇宙人や化物相手に、できることなんてありゃしない。俺たち人間にとって唯一の希望であるあんたのあんな風にやられる姿を、今のこの様を見たら、もうどうでもよくなっちまうよ」

 男は親指と人差指で少女の尻肉を転がし、中指で股間をさすりながら言った。その声はいかにも気だるげで、芯がない。

 ソフィーは掠れるような声をベッドに吸わせ、その身を震わせる。その姿は、非力で無力な少女そのものだ。

 白衣の男がベッドに腰掛け、鮮やかな紅色の髪を手に取る。

「あなたの治療をしているとき、あの宇宙人が現れて、わたしに言ったんです。『明日の朝、夜明けとと攻撃を開始する。もはやこの女に我々を止める力はない。どうせ死ぬなら、最期にこの女の身体を好きにしてみたいとは思わないか?』と。そして……」

「あ、あの、すみません!もう、我慢出来な……」

 色白の青年が突如大きな声を出し、白衣の男の言葉を遮る。男たちに傷ついた身体を弄られ悶える姿はあまりにも扇情的で、逃れるように突っ伏し声を震わせることしかできない、普段の凛々しさと力強さからかけ離れた少女の弱々しさに青年は情欲を昂ぶらせていた。ズボンの上からいじっていたそれをあわてて露出させる。顔を上げたソフィーの眼前、海綿体を限界まで充血させた自らのペニスを青年が握った瞬間。

「……きゃっ!? 」

 反射的に顔を伏せるソフィー。 

 飛び出した白濁液が、ツヤのあるソフィーの前髪を汚す。

「は、……ははは」

 青年は息を弾ませながら笑う。引きつった笑顔が歓喜のそれへと変わっていく。

「だ、大丈夫……。ぼく、僕は、信じてます。今は戦えなくても、きっとあいつらを倒してくれるって。僕が死んでも、魂は、あなたが救ってくれるって。あな、あなたは僕のめ、女神様だから。死ぬ前に、あなたに僕を受け止めてほしくて」

 ソフィーは答えない。唇が震えているが、瞳は顔の右半分を覆ったガーゼと、前髪に隠れ表情を伺うことはできない。

「もういいですか。話にもどらせてもらっても」

 白衣の男が呆れたように言う。

 青年はすみません、すみませんと繰り返し、すごすごと下がる。

「まぁ、あとはわかりますよね。私は思いました。あの宇宙人の言うとおりだと。はばからずに言うなら、前々からあなたの闘う姿に欲情していましたから。そして、同じ、いや、似たような感情を持っている二人を誘いました。今のあなたにどの程度の力があるかはわかりませんが、私一人でどうこうするのには不安がありましたから。しかし、杞憂だったようですね」

 白衣の男の手がソフィーの肩に手をかけ、ベッドから引き剥がす。

「うっ、うぅっ……」

 ソフィーは歯を噛み締め涙を流していた。静かな部屋に嗚咽が響く。手足は投げ出され、傷ついてもなお美しいその身体がさらされる。

「お願い、こんなこと……やめて。きっと、きっと皆を守るから。……お願い……! 」

 彼らの行いは非道そのものであるが、ソフィーは自責の念にかられていた。彼らを絶望させる姿を見せてしまったと。そして、彼らに身体を弄られているときに思ってしまったこと、『身体さえ動けば。力が入れば』と。力を行使できていたらどうするつもりだったのかと。しかし、彼らの間違った行いを受け入れるわけにはいかない。だから、懇願した。ただただ。

 男は何も答えず薬液の入った注射器を白衣の懐から取り出した。

「それ……は?なんの薬ですか!?お願い、待っ……んんんんんんっ!? 」

 白衣の男に口を押さえつけられ、言葉が遮られ、胸元に注射器を突きつけられる。

「もう、今更どうやってそんなこと信じろっていうんです?私は出来る限りの治療をしました。もしかしたら不思議な力で傷が治るんじゃないか、あの宇宙人から護ってくれるんじゃないかと、奇跡を信じてね。でも、朝までに戦える状態にはならない、あなたはそう言いました」

 ソフィーは身を捩って、投薬を拒む。

「大人しく、しろぉっ!! 」

「んぐううううぅぅ!! ……がふっ、ごふっ! 」

 坊主頭の男がソフィーの腹部に拳を振り下ろす。

 弱った少女の身体を、男たちが押さえつけ、注射器が改めてソフィーの胸にあてがわれる。

「……っ!?」

 注射器の針が、カラータイマーの脇から潜り込む。

「あの宇宙人から、あなたを慰みものにするなら使うと良いと渡されたクスリです。我々はもう諦めたんです。最期の時が目の前に迫ったとき、最後の最後まで抵抗し、あがく人間ばかりではないんですよ」

 注射器から、薬液が注入されていく。

 「どうせつまらねぇ人生だ。あんたを抱けるなら、悪くねぇ最期だよ。へへっ」

「べ、別にそそのかされたからってわけじゃないんです。勇気を出して決断しました。あなたに触れられるなら、僕を見てもらえるなら、と」

 男たちに押さえつけられた少女の身体が震える。

「うっ、あっ!? はーっ、はーっ……あああああぁっ!? 」

 銀色の身体が暴れる。抵抗ではない。痙攣を起こし、身を捩りのたうち回ろうとするする。 

「おい、なんだこりゃ!? 大丈夫なのかそのクスリ!」

 坊主頭の男がソフィーの下半身を必死に押さえつけながら、白衣の男に叫ぶ。

 白衣の男も、同じようにソフィーの身体を押さえているが、何も言わない。ソフィーの胸、カラータイマーに注視している。

(熱……い!身体が……灼けるみたい、に……!!)

 投与された薬品がソフィーに身体を開くよう促す。

 もともとソフィーの身体にエネルギーはほとんど残っていなかった。ダメージを負い十分なエネルギーを精製できないソフィーのエネルギー器官の核はクスリの促しに応え、身体に残っていたなけなしのエネルギーを強制的に集め、性エネルギーに変換してしまっているのだ。

 光の灯っていなかったソフィーのカラータイマーの奥、エネルギー器官の核が桃色に光を帯び、弱々しくだが輝く。同時に、身体の痙攣が治まる。

「成功したようですね」

 白衣の男が視線を移した先、ソフィーの股間部には濡れそぼった割れ目が姿を現していた。

「あぁ……ぁ……」

 潤んだ左目は見開かれ焦点が合っておらず、喉から僅かな声をもらすだけで、ソフィーの身体は動かない。

「あぁっああああ……!! 」

 両目を固く閉じ、突如身体を襲った激痛に絶叫するソフィー。

 意識は熱に浮かされたようにぼーっとしているのに、身体の感覚は鋭敏になり、傷の痛みが増幅される。

「ひあぁあぁっ!? 」

 しかし、ベッドに乗り上げた白衣の男が少女の割れ目を指でそっと撫でた瞬間、ソフィーを襲ったのは別の感覚。銀色の身体が跳ね、仰け反り、柔らかな胸が弾む。

「うあっ、あぁっ……はううぅ、んんんっ!! 」

 男たちが手を這わせただけ。それだけのことに、クスリに冒された少女の身体は過剰な反応を示す。

 肉体を支配していた激痛が、濁流のように押し寄せた快感に溶かされ混ざり合う。

「あぁ、ソフィー様、ソフィー様!! 」

 色白の青年がベッドに乗り上げながらソフィーの身を起こし、後ろから抱える。

「あ、お前!……まぁいい」

 一番手は首謀者である白衣の男。坊主頭の男は青年にいいポジションを奪われ語気を強めたが、すぐにおとなしく再びソフィーの脚を抱え太ももに顔を埋めた。

「あ、ぁんっ!あぁっ!やめ、あぁんっ!!」

「あぁ、ソフィー様の身体、柔らかい、いい匂いだぁ!」

 青年の手が包帯の下に潜り込みながら、ソフィーのたっぷりとした双丘を揉みしだく。同時に、すがりつくように抱き寄せた、背中から首筋に舌を這わせ髪の匂いを堪能する。

 坊主頭の男は腿裏に顔全体を押し付けながらキスをし、両手で太ももの肉をこねる。扇情的な脚の、太ももの、そのやわらかさと弾力を一片たりとも逃すまいと鼻息荒くむしゃぶりつく。

「はぁっ、はぁ、あぅ、んんんっ!くうぅっうううぅ……!は、あぁ……ん……」

(身体が…身体が、ドロドロ、に……おかしく……な……る……)

 エスカレートしていく男たちに呼応するかのように、少女があげる嬌声が激しくなり、空気を求め息が乱れる。

 病室にこだますほどの自らの声すら、どこか遠くのもののようにソフィーは感じていた。

 クスリの作用で身を裂かれるような傷の痛みすら、男たちの愛撫により与えられる刺激と混ざって快感となり、まるで男たちと自分の肉体が溶け合うような、どこまでが自分の身体なのかわからなくなるほどの感覚に襲われていた。

「ひっ、ひぃっ! ひうううぅぅ……!! 」

 ソフィーの嬌声が引きつる。

 白衣の男の指が割れ目をこじ開け、ソフィーの”なか”へと侵入し道をかき分けていく。無遠慮に荒らし周り”そこ”を探り当てる。

「ふああぁぁっ!? はっ!あっ!あああああぁっ!!はーっ!はーっ!ぃやああぁあああぁ……!! 」

 ひっかくように、差し入れた中指と薬指で”そこ”をノックされた瞬間、ソフィーを激烈な感覚が襲い、秘部から熱いものを吹き出ださせる。そして、尿道を走るその熱は更なる快感を生み出し、ソフィーを狂わせる。嬌声を抑えられず、なりふり構わず喘ぎ、悶え、艶姿を晒す。

「やめてぇ……もう、やめへぇ……ほぉとに、本当に……おかひく、なる……こわれ……ちゃ……ふあぁっ!? 」

  よがり狂った少女のろれつの回らない懇願など、獣にその身を堕としたオスたちにとっては餌でしかない。もっと、もっとこのメスを狂わせたいと、オスたちは手を止めずに、更に激しく責め立てる。まさぐり、揉みしだき、撫でさする。荒い息の嵐が肌を吹きすさび、舌が這い、口づけの雨が降り注ぐ。

「あぁっ……く、うぅぅ、んっ……ああああぁっ!ああああああああぁ……!!

 ソフィーに達した余韻などない。

 絶頂を振り切った快感にも、クスリに冒された身体は与えられ続ける快感に健気に従うようにとめどなく、天井知らずのオーガズムへと至る。

 どこまでも昇り続け、降りることを許さない。

 そして、白衣の男がとうとう下着にしまわれていた肉棒を取り出す。膨張しきり反り立ったそれ。

「はあああぁぁっ……!!ひゃ、いや、やめて!それだけは、はううぅんんんっ!!」

 いよいよ訪れた貞操の危機に取り戻した確かな意識も、一瞬で快感の渦へと飲み込まれていく。

「ふぅううああああぁっ……!? 」

 白衣の男がしばし眺める。

 傷だらけになってもなお美しく、自分が手を止めても悶え続ける、抜群のプロポーションを持つ少女の銀色の身体と、晒され続けるアクメ顔。

 白衣の男の口角がにやりとあがる。

 男のペニスが脈打ち、血管を浮き出させる。

 男に躊躇はない。

「……!?ああああああああぁっ……!! 」

 なんの合図もなく、あてがった肉棒を突き入れた。

「ふあっ……んあああああああぁっ……!! 」

 圧迫感と貫かれる熱感に少女が悶える。

 ソフィーの”女”が、本人の意志とは無関係に男を受け入れる。吸い付き、男を刺激する。

「ぬっ、おっ……これ、は……」

 男はかつてない感触に、喜色満面に歯をむき出す。そして、動いた。ゆっくりと、徐々に激しく。

「ふあっ!あっ!あっ!あぁっ……!!」

 ソフィーのあえぎ声が跳ねる。男のリズムに合わせるように。

 汗ばんだ銀肌の尻肉が打たれ、ぺたぺたといやらしい音を奏でる。

「ひああぁっ! ふあっ! あぁっ! ああああぁっ……!! 」

 白衣の男がソフィーを貫き、腰を動かし続ける間も二人の男の手は止まらない。

 脚には舌が這い、乳房は生を受けたかのようにその形を変えられ、踊らされている。

 三者三様の刺激が渾然一体となって、少女の肉体を快感で冒しつくす。

「あああああぁ……ああぁぁ……」

 その瞬間への怯えに、少女の声は震え、泣き声と嬌声が混ざリ合う。

 満身創痍の肉体は望まぬ快感に冒され、弱々しく首を横に振ることしかできない。

 男は長くは保たなかった。

「ぬっ!あっ!……ぐっうっ……! 」

 白衣の男が絶頂を迎える。

 膣内に、見も知らぬ男の精液が注ぎ込まれる。

「んんんん……あああああああぁっ……!!」

 熱いものが”なか”を満たしていく感覚が快感となり、全身を駆け巡った。

 電流が走り、身を焼き尽くす。

「……ぁっ!!」

 ソフィーの首がガクリと垂れる。目を見開き、口はパクパクと開閉し、溢れるものが垂れ流される。

「ぅあ……あ……」

 クスリに冒された少女に、男たちが叩きつける欲望に抗うすべはなく、その肉体は快感に征服された。


「おい、早く代われ。次は俺の番だ」

 暴力に、快感に打ちのめされた少女に、休息は与えられなかった。

「あうぅっ!!」

 坊主頭の男がズボンを下ろしながら、白衣の男と入れ替わるようにソフィーの足元へ陣取り、ソフィーの両腿を抱えると勢い良く引き寄せた。

 色白の青年の手から離れた少女の身体は、ベッドに仰向けにされる。

「はぁ、やめ、て、はぁ、はぁ……もう、……もうこれ以上は、はぁ、耐えられない……」

 絶頂の嵐からようやく開放され、まだ息も整わない。

「耐える必要はねぇさ」

 しかし、容赦なく男が貫く。ひと突き目から深々と。

「ひんっ!? ……んんんあああああぁっ……!! 」

 絶頂から降りる間すら与えられない。少女の肉体が貪られる。

「ふあっ!?ふあぁあぁっ!ふうぅうぅうぅ……!! 」

 白衣の男のそれより、二回りは大きい。

 より強く、削り取られるような感覚にソフィーの呼吸が引きつる。

「はぁ、良いぞ、いい女だ。全部、全部味わってやる」

「いゃっ、やあああぁっ! あんっ! んあああんっ!! 」

 男はソフィーの両脚を揃えて押し倒すと、そこに顔を埋めた。鼻息荒く、頭を左右に降り顔を擦り付ける。そうしながら両手で尻肉を撫で、揉みしだく。ぷはっと息を吐き顔を上げると、今度はソフィーの両腿を割り、押し開く。

「ううぅぅ……いや、いやぁ……もう、もう……」

 快感の波に飲み込まれるのを恐れるソフィーの表情が、男の嗜虐心を駆り立てる。

「ひうぅっ……! 」

 男が手で鼠径部を撫でながら銀色の身体に覆いかぶさっていくほどに、少女を貫く肉槍が奥へ奥へと突き刺さっていく。

「あぁん……あんっ!ああぁっ!あああぁっ!! 」

 汚らわしい唇がソフィーの腹や胸を這い、濡らしていく。ところかまわず降り注ぐ口づけ。

「ふあぁあっ!? ひうっ!? ひうぅっ!! 」

 男が二つの膨らみのうち、右側に顔を埋め、吸い付いた。まるで乳飲み子のように乳頭を咥え、舌で転がす。

 ソフィーは反射的に男の頭を引き剥がそうと左手で押しのけようとするが、乳頭を甘噛された刺激に身体は発作を起こしたかのようにビクビクと震え、男の頭を撫でることしかできない。

「ふうぅ、うっ、ううぅん……!!」

 男がふっ、と息をつき乳房が口から解放されるが、胸への責めは終わらない。

 今度は両手で、二つの乳房が男のゴツゴツした手に形を歪められる。柔らかく豊かな肉は男の大きな手にも納まりきらずに零れそうになる。

「くうううううぅ……!?や、やめぇ……ううううぅっ……!!」

 爪でカリカリと乳頭をこすられると、甘い刺激が疼きとなって、乳房で生み出される快感が爆発しそうになるのを焦らし、膨れ上がらせる。

 胸で渦巻く快感と、下からせり上がってくるような快感が、ソフィーを飲み込んでいく。あれほど声をあげ、幾度も絶頂に達したのに。心で拒否しても、クスリが回った身体は際限なく快感を受け入れる。

「ひあぁっ……んぐっ、んむ、あはぁっ、んんんんんっ……!! 」

 乳頭をつまみ上げられ、嬌声をあげようとしたソフィーの唇を男の口が塞ぐ。顔を背け逃れられても、すぐに追いかけ、捕まえる。今度は頭を押さえて逃がさない。紅色の髪が美しい頭を両手で抱き、より激しく突き上げる。

「んんっ! んんっ! んんんっ! ……んんんんんん……!! 」

 男のピストンに声をあげることも許されず、肉体を冒す快感をわずかばかりも逃がすことができない。

 身体が、押し寄せる快感に満たされていく。身体の中で暴れ、荒れ狂い、爆発を繰り返す。

 自由になっているのは脚だけ。つまさきが立ち、身体の下に敷かれたシーツをひっかきシワをつくる。全身を濡らす汗が銀色の肌のコントラストを一層強くし、窓から差し込む月明かりが太ももの淫らな震えを克明に描き出す。

「ぷはぁっ……はっ、はっ、あぁ、あぁっ……!」

 ソフィーの唇を男が開放する。

 酸欠状態でありながら呼吸もそこそこに喘ぎ声を漏らす。

「ぐ、くっ、こっちも、もう何回もイッてんだ。しっかり、全部受けとめろぉ……!」

 男は大きく息を吸い込むと再び少女の唇を奪い、覆いかぶさった身体を密着させ、その銀肌の肉体を強く抱きしめる。

「むぐ、んっ! んんっ! ……」

 ソフィーの見開いた目から、大粒の涙がどっと溢れる。

「おおぉっ……」

「んんんっ!んっ、んんっ、……んんんんんんっ!!」

 口を塞がれ、くぐもった悲鳴を響かせるソフィー。男が絶頂しながらも溜め込んだ、都合5回分の精液が、一気に叩きつけられる。秘部には男の下腹部がピッタリと密着して、一滴たりとも子種が漏れるのを許さない。身悶えすることすら出来ず、男とベッドの間で少女は銀色の身体を痙攣させる。

 ソフィーが、ごっ、ごっと二、三度喉を鳴らすとともに身体を跳ねさせたところで、ようやく男がソフィーを開放した。男ももはやなにも言わない。ベッドから転げ落ち、まさに精根尽き果てたといった様子だ。

 ソフィーは泡を拭いて倒れたまま動かない。湿ってくすんだ包帯とは対象的に、全身をぐっしょりと濡らす二人分の汗が少女の銀色の肉体を艶かしく輝かせる。

 坊主頭の男の無茶苦茶な責めに失神し、ぐったりとその身を横たえるソフィーの髪に、撫でるように青年が指を通す。


「つ、次は、僕の番だ……い、今、傷の痛みなんて忘れさせてあげますから……」


 空はまだ薄明るい。

 三人の男たちが身支度を整える。

 めちゃくちゃに荒らされたベッドには誰もいない。

 銀色の肌の少女は、床に転がっている。美しい髪がひどく乱れている。顔と頭と以外、包帯も固定具もほとんど取り払わ、痛々しく傷ついた身体がさらされている。身体の模様とは別に、縫合がほつれた傷口から流れる血と、いくつものキスの痣が銀色の肢体を赤く彩る。クスリによってこじ開けられた門はすでに閉じられている。

 男たちは何も言わずに病室の扉を開け、病室を後にしようとする。

「……ない、で……」

 ソフィーの、か細い声に男たちが足を止める。

「諦め……ない、で……」

 男たちは何も言わず、お互い無言で去っていった。

 満身創痍の身体に容赦なく叩きつけられた三人の男たちの歪んだ欲望。

 クスリで増幅され、荒れ狂った快感の波に少女の生命力は貪られた。

 波が引いた後に残ったのは身体を襲う激痛。

 本来極めて純粋なエネルギーであるはずの性エネルギーはクスリによる作用で精製されたせいか、劣化エネルギーとなって身体に残留している。

 ボロボロに傷ついた少女は、病室の硬い床にその身を横たえたまま眠りに落ちた。日が昇るまでの、ほんの僅かな間。


 太陽が、その一部を覗かせ、拡散、反射された光が空を青く彩る。

 高層のマンションが朝の日差しに照らされ、長い影を作る。

 まだ、自動車が走る音がまばらにするだけの、住居の多い街。これから動き出そうというその街の静寂は唐突に破られた。

 地響き。音の中心地では建物が崩落し、土煙が舞う。

 姿を現す、ティム星人。

 昨日のことを知らない人間はいない。人々は瞬く間に混乱に陥った。

 しかしそのとき、一筋の光が人々の視線を集めた。

「来たか……」

 上空から、ティム星人に向かって一直線に銀色の巨影が向かっていく。

 幾度となく人々の危機を救ってきた、ウルトラガール・ソフィーの登場に人々が色めき立つ。

「はあああああぁっ……!!」

 吠え、ソフィーが突撃する。

 次の瞬間、いくらかの希望を持っていた人々の胸中は不安に染められる。

「うっ……ぐぅっ!? 」

 巨大な少女と宇宙人の衝突が街に轟音を響かせた。

 突進はいなされ、ティム星人の膝がソフィーの腹に突き刺さる。

 ソフィーの身体がくの字に折れる。

「こんなにも、柔らかかったか……?」

 愉悦に満ちた声色。

 一方のソフィーの口からは、苦しげな呻きとともに液体が溢れ出す。

「がっ……はぁっ……げほぉっ……」

 片手で首を締められ、高々と掲げられる無残に傷ついた銀色の身体。

 腹に受けた衝撃に強制的に排出されようとする空気が、締められ、狭められた気道を押し通る。

「まさか、本当に現れるとはなぁ……肌艶が良いんじゃないか?誰かに、慰めてもらったのか?その傷ついた身体を。くくく」

 皮肉に満ちた声色。

 ソフィーの全身に刻まれた傷と、わずかに赤く灯るだけのカラータイマーに、人々の不安が一層強くなる。

 ソフィーを片手で吊り上げたまま、ティム星人が腰に備え付けたカプセルを四方に投げる。

 四匹の怪獣が二人を囲むように出現する。一際巨大な一匹は、昨日の長鼻の怪獣だ。

「ぁっ……ぁ……」

 首を反らし、うめき声をあげるソフィー。苦悶に目を固く閉じたまま、首を締めるティム星人の腕に左手を打ち付け、銀色の肢体を懸命にもがかせる。内出血で赤黒く腫れた右腕は、それに合わせてぶらぶらと揺られるだけ。

「最期まで諦めない。お前はそういう女だ。そのままでいろ。死の覚悟などするな。もがけ。最後の最後まで……」

 そういうと、ティム星人はソフィーの首を放し飛び上がった。

「げほっ、げほっ、ぅぁっ……ぁ……!」

 崩れ落ち、両膝と左手を地につけるソフィー。

 四方から、怪獣達が唸り声をあげる。上空では翼竜と魚竜が回遊し始める。

「くっ、うぅ……」

 ソフィーが震える左足に力を込め、立ち上がる。右側を腫らしたその顔には疲労の色が濃く、漏れる声は苦悶に満ちている。汗ばんだ身体が、朝日を受けて輝く。

 震える左足だけを支えに立つその姿に構えなどない。

 満身創痍の少女戦士に、怪獣たちが咆哮とともに殺到する。


「あっ、くぅっ……あぁっ! ……はぁっ、はぁっ、きゃあ!? ……あああああああぁっ……!!」